2011年02月27日

Orwell "Le Genie Humain"

CDショップで何の気なしに買ってみたファーストアルバムが予想以上によかったフランスのバンド、オーウェル Orwell。昨年10月にの2枚目のアルバムが発表されていたことをつい最近知り、聴いてみたところこれが前作を上回る秀作でした。ファースト・アルバムでギルバート・オサリバンの "Clair" をカヴァーするなど、ノスタルジックなポップスへの嗜好を示していた彼ら、今作もその路線を変えることなく、さらにソングライティングのセンスに磨きがかかっています。ほとんどの曲はフランス語(アルバム中の1曲 Elémentaire をお聴きください)で歌われていますが、実にしっくりと曲にはまっていてフランス語ロックの名作のひとつともいえるでしょう。全体に漂うレトロな雰囲気がこの季節にぴったりです。

□ Orwell "Elémentaire" http://youtu.be/izDLVJpLras


Le Genie Humain
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Orwell
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2011年02月25日

XTC 'skylarking'

1970年代にパンクバンドとしてデビューし、次第に凝った音作りをする職人的気質を帯びていったイギリスのバンド XTC が、これまた独創的なソングライターであるトッド・ラングレンによるプロデュースのもとで1986年に制作したアルバム「スカイラーキング」。XTC のフロントマン、アンディ・パートリッジとラングレンの仲が制作中に険悪になり、アンディ自身が「失敗作」であると言い放ったアルバムながら、美しい旋律の曲ぞろいで XTC のアルバムのなかでも大人っぽく落ち着いた作品(その反動か3年後に出た次作 Oranges & Lemons はサイケ色の濃いはじけたアルバムでした)に仕上がっていて、個人的にはいちばん好きです。実はこの作品は夏の一日の時間の移り変わりをテーマにして作られたものだそうですが、一曲目の冒頭に聞こえる虫の声をはじめ、後半に出てくる映画のサントラ風の曲調などがどこか秋をイメージさせます。アルバムとしての統一感もすばらしい(とりわけ前半の流れが絶妙)ので、これはシャッフルではなく一曲目から通して聴いていただきたいです。

□ XTC - Grass http://youtu.be/Ozu8KGFH-CU

Skylarking
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XTC
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2011年02月24日

Gilbert O'Sullivan "Alone Again"

子供の頃、テレビのCMでやたら流れている曲があってそれがギルバート・オサリバンの「アローン・アゲイン Alone Again (Naturally)」であったことを知ったのは相当後になってからのことです。ゆっくりとしたリズムと、一度聴いたらすぐに口ずさんでしまえるような親しみやすいメロディのこの曲は、年月を経ても色褪せることのない名曲中の名曲です。品のある優しい声は、どこか乾いていて寂しげ(「アローン・アゲイン」はひとりぼっちになってしまった男の悲しい歌でもあるのです)に聞こえ、それが秋の空気のイメージと重なるのかもしれません。彼のナンバーは、この曲のほかにも "Clair" や "What's in a Kiss" など、CM や映画で多用され、どこかで一度は耳にしたことのある名曲ばかりなので、まずはベスト・アルバムをお聴きすることをおすすめします。ところでその昔、ポール・マッカートニーが彼を自分の後継者として認めたという話ですが、そのポールはいまだ現役・・

アローン・アゲイン
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2011年02月23日

The Monochrome Set 'Love Zombies'

ザ・モノクローム・セットは以前ご紹介したイギリスのエル・レーベルに所属していたこともあるバンドです。軽快でテンポのよいギターとキャッチーでポップかつときにエキゾティックなメロディ、そしてリーダーでヴォーカルを担当するインド人のビドの甘い声が魅力で、かつてアンディ・ウォホールが彼らについて「ベンチャーズとヴェルヴェット・アンダーグラウンドを足して2で割ったようだ」と述べたのだそう。ダークな色調を帯びた曲もあるけれど、彼らの音楽には常にチープな雰囲気が漂っていて、そのB級感がたまりません。セカンド・アルバム Love Zombies にある "The Man with Black Moustache(黒ひげの男)" という曲のイントロがクリスマスっぽくてこの季節によく聴いていましたが、サンタのことをパロった陽気な曲なのかと思っていたら、どうも物騒な内容の歌みたいです・・ このアルバムは現在廃盤ですが、この曲はこちらで聴くことができます。

The Monochrome Set - Jet Set Junta (彼らの代表曲。ビドが美しい!)
http://youtu.be/4ouBnu9AQcU


Best of the Monochrome Set
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2011年02月22日

Depeche Mode 'A Broken Frame'

フランスのファッション雑誌から命名されたデペッシュ・モード Depeche Mode は、それが理由でというわけではないでしょうが、本国イギリスだけでなくフランスでも人気のあるエレクトリック・ポップのグループです。80年結成だからもう30年近く活動してる、ってすごい。最近はハードでソウルフルなイメージが定着しているみたいだけど、結成したてのころは物静かな青年たちが恥ずかしそうにやってる、というような音でした。彼らの2枚目のアルバム A Broken Frame は最も内向的な作品で、ヒット曲 "The Meaning of Love" のようなポップな曲もあるものの、"Leave in Silence" や "My Secret Garden" というその他の曲名が語るように、叙情的で静かな音が中心です。今となっては多少の古臭さはありますが、この柔らかいシンセの音を当時聴いたときは、「電子音ってこんなに温かくて切ないんだ」と驚いたし、デイヴ・ガーンのヴォーカルが前作よりもいっそう厚みと深みを増したことでその感動もなおさらでした。私は冬にエレクトロ系の音楽を特に聴きたくなりますが、発表されて25年以上たつこのアルバムは今でもそのお気に入りのひとつです。しんみりしたい冬の夜におすすめ。

□Depeche Mode - My Secret Garden http://youtu.be/Yk8kQV5Bnc4


A Broken Frame
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2011年02月20日

Ben Watt 'North Marine Drive'

冬の時期一人でしみじみしたいときに聴きたくなるのがベン・ワット Ben Watt の1983年作「ノース・マリン・ドライヴ North Marine Drive 」です。彼は夫婦でのユニット、エヴリシング・バット・ザ・ガール Everything But The Girl での活動のほうが有名ですが、ソロ・アーティストとして(おそらく)独身時代に発表したこの作品は、アコースティック・サウンドの名盤です。奥方トレイシー・ソーンの生命力あふれる低音とは対照的な、頼りなげで繊細な彼の声とアコースティック・ギターのみで成り立つシンプルな音は、なぜか寒い季節になると懐かしくなってよく聴いています。冬枯れの景色に似合う物悲しい音なのだけれど、一方で 温かみも感じられるのは、やはりベンの声のもつ優しさゆえなのでしょうか。昔、このアルバムタイトルと同じ名前のファッション・ブランドがあったのだけど、たぶんデザイナーの人が彼のファンだったんだろうな・・

□Ben Watt - North Marine Drive http://youtu.be/zNflP5ow71o

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2011年02月14日

Barbara ”Dis quand reviandras-tu?”(いつ帰ってくるの)

Dis Quand Reviandras-Tu?フランスの自作自演の歌手、バルバラの曲を選んでみました。シャンソンというジャンルに分類される歌手ですが、時に甘く遊蕩の雰囲気すら漂わせる楽曲がシャンソンの陽の面とすれば、バルバラは影の面を代表する人。かのゲンズブールも初期の作品はシンプルな音で硬質な感じを漂わせていましたが、バルバラの作品もああいう感じと思って頂ければわかりやすいかもしれません。しかし、彼女のほうがよりストイックであり、クラシカルな訓練を積んだ静謐でよく伝わる声とほどよく乾いた叙情性をたたえたメロディの組み合わせは、ちょっと古楽を思わせるところもあります。春を待つ季節を過ぎ秋になっても戻ってこない不在の相手に向かって、一心によびかけるバルバラの歌は、祈りにもにた感じがします。

さて、この曲がまだ公開中のフランス映画『ずっとあなたを愛してる』(“Il y a longtemps que je t’aime”)のエンドロールに使われています。ただしオリジナルではなく、カバーヴァージョン。フランスのベテランロッカー、Jean-Louis Aubertの弾き語りです。本人も認める通り「歌の人」ではなく、とつとつと歌っているのですが、オリジナルの張りつめた感じとは違い、薄ぼんやりとした日差しのような暖かさがあります。

映画は、ある事件をきっかけに生きなが自らを葬ることにした中年女性が、長い刑期の後、少しづつ「生」の世界へ戻ってゆく様を描いていますが、カバーヴァージョンのぎこちない暖かさが主人公と彼女を囲む人々との手探りの人間関係と妙に響き合って、しっくりときます。できれば映画館で、ぜひ聞き比べてみてください。

Dis quand reviendras tu ?
Dis au moins le sais tu ?
que tout le temps qui passe
ne se rattrappe guère
que tout le temps perdu


バルバラの歌を聴きたい方はこちらをどうぞ。
http://youtu.be/nUE80DTNxK4

歌詞を知りたい方は、英語の字幕があるバージョンを。
http://youtu.be/6Llpdzx4dSU

映画で使われていた、Jean-Louis Aubertの歌はこちらで聴けます。
http://youtu.be/wwcZrdwQvcw





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2011年02月12日

浅川マキ 『それはスポットライトではない』

DARKNESSIV浅川マキさんが亡くなった。ステージに現れなかったことで、この世にバイバイしたことを皆に伝える事になったと聞き、そうか、と納得してしまいました。鈴木いづみの小説『ハートに火をつけて!(誰が消す)』に名前を変えて登場する、からりと皮肉の利いた handsome な歌手のイメージと、すっと結びついたからかもしれません。
 
死を伝える記事の見出しには「アングラの女王」といったいかにもな名詞が並んでいます。確かに、華やかな場所とは縁のない人でした。しかし、シンプルに、すぐれた歌い手であったことを強調しておきたい。特に、自己流に歌詞を訳して歌った「洋楽」のカバーは、言葉の選び方ひとつ、歌い方ひとつに浅川マキという人の個性と魅力が現れていたと思います。
 
とりわけ印象に残った一曲を選びました。原曲の歌詞にある「想う人との再会」の部分をばっさり切ることで、永遠に失ったもの−あんたの目に輝いていたあの光−を思っては悔やむ男の気持ちに焦点を合わせた彼女のバージョンは、作者であるオリジナルのジェリー・ゴフィンや、ロッド・スチュワート、ひいては彼女にインスピレーションを与えた御大、ボビー・ブランドのバージョンも軽く凌駕するものになりました。途中挟まれる原曲の英詩も味わい深いのですが、浅川マキの声と日本語詩は、色恋を超えた「おいら」の純な心を切々と伝えて、たまらない気分にさせてくれます。

それはスポットライトではない(It’s not a Spotlight)

日本人の歌う洋楽、という点からも、かなりのカッコよさだと思うのですが。




GOYAAKOD(初出:2010年1月25日)

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