2012年05月29日

Mike Oldfield "Ommadawn"

マイク・オールドフィールドのファーストアルバムは「チューブラ・ベルズ Tublar Bells 」。それはチャールズ・ブランソンのヴァージン・レーベル創業期(今は航空会社として有名)の記念すべきアルバムでもある。全英チャート1位を記録し、これまでイギリスで34番目に売れたアルバムでもある。確かにイギリス人の郷愁をかきたてるような音だ。さらにアルバムの導入部が本人の意図に反してホラー映画「エクソシスト」のサントラに使われ、不本意な形で彼の知名度を上げたことでも知られている。

OmmadawnHergest Ridge

マイク・オールドフィールドはプログレッシブ・ロックの範疇に入れられることが多いが、ひとりであらゆる楽器を演奏して、ダビングを重ねながら作品を作り上げる元祖多重録音ミュージシャンである。アメリカではニューエイジ系の先駆者として数えられているようだ。彼の3枚目のアルバム、「オマドーン」にはタイトル曲一曲しか入っていない。CDではPart 1 Part 2 と2楽章に分かれているが、もとはLP盤のA面とB面だった。

このアルバムはケルト音楽の最も強い影響下にあって、イラン・パイプ uilleann pipes というアイルランドのバグパイプが使われている。このアルバムは2枚目と同じくHergest Ridge(ハージェスト・リッジ)で録音されている。そこはマイクが住んでいたヒアフォードシャーとウェールズの境にある丘の名前で、2枚目のアルバムのタイトルにもなっている。マイクはチューブラベルズの成功のあと、人の目を避けて田舎に引きこもっていたのだった。

ジャケットにも写しだされている優しい目をした内向的な青年の隠遁生活が伝わってくるような、途切れのない数十分の音の織物だ。ワーズワースの詩を髣髴とさせるような牧歌的な風景が目の前に広がる…雪解けの冷たい水が流れる小川を渡り、薄暗い森を抜け、突然開ける草原を横切って、どんどん歩き続ける…

アコースティックな楽器の類だけでなく、エレクトリック・ギターも使われているが、音色がうまく溶け込んでいてあまりエレクトリックな感じがしない。それでいて情熱をひたすら内側に向ける心の動きを直接映し出すようにエモーショナルで、じわじわと聴く者の魂を高揚させていく。ミニマルなアフリカン・ドラムとも絶妙に絡んでいて、それらが生み出す土着的なグルーブは土の下から萌え出る春の胎動のようだ。

広大な平原でひとり佇み、強風に流されていく雲を見上げているような2枚目の「ハージェスト・リッジ」も甲乙つけがたいアルバムである。つまり3部作まとめておすすめ。


cyberbloom

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posted by cyberbloom at 22:58| Comment(0) | UK ROCK '60-'70 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年05月04日

"Broken" Tift Merritt ―“Another Country”(2008)

すっかりすりきれてしまった。どこか遠くへいって静かに過ごしたい・・・。

そんな無理な願いにふっと捕われたことはありませんか?そうは言ってもね、と肩そびやかして吹き消す願いを実現してしまったのが、今回ご紹介する Tift Merritt 嬢。

発表したアルバムがグラミー賞にノミネートされるなど一躍脚光を浴び、売り出し中の期待のアーティストとして、プロモーションやらライブにアメリカ国内はもちろん国外へも、旅から旅へ渡り歩く日々。一緒に移動するスーツケース同様くたびれ果てて、わけがわからなくなって、彼女は決断します。いろんなことを放り出して、とにかくパリに行こう。しばらく戻らないつもりで。

フランス語に不自由しない身では全くなく、むこうに助けてくれる友達がたくさんいるわけでもない。辞書とギターを抱え、部屋を貸してくれる見知らぬパリジェンヌのアパートにとりあえず転がり込んだ彼女を待っていたのは、思いがけない自由な暮らしでした。
 
苦情が来るくらいピアノを弾いて、あきれるほど物を書いて。観光客が息をひそめそぞろ歩く教会で、ホームレスの人々と一緒に腰をかけ、ステンドグラスから溢れる光と静寂を楽しむ。フランス語の Swear words を覚え、辞書を片手にぽつぽつと会話をつなぎ、ご近所さんに挨拶する。何気ないことの積み重ねが、ぺちゃんこだった彼女を充たしていきます。

フランスでの暮らしは、歌の種も育んでいました。帰国後新しいレーベルから発表したのが ”Another Country”。フランス語の自作曲を含む収録曲はどれも肩の力が抜けています。基本の音はアメリカならではのロックで、彼女らしさはちっとも変わらないのですが、アルバムジャケットの写真がそうなように、なんとものびやかで、アメリカを感じません。フォアグラの看板や小さなワインの店のある界隈で彼女が満喫した自由をお裾分けした気分になります。

とりわけきもちよく鳴る一曲を選びました。たたずまいがあるのにどこかはにかんだような表情も見せるTift Merrittの声に、こちらもほほえんでしまいます。

こちらで聴くことができます。

http://youtu.be/jE5S7dVpXC8


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posted by cyberbloom at 09:38| Comment(0) | OTHERS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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