2011年12月12日

Radiohead "OK Computer"

O.K. ComputerRadiohead が何年のデビューでどういう流れを汲むグループで、とか、これが何枚目のアルバムで、この時代は音作りがなんちゃらだから云々…的な音楽通のコメントはわたしにはできん。とにかく、眠気もピーク、心の荒み具合もピーク、…いまどきノーエアコンの住環境で暑さ寒さもピーク(ちょっぴし生命に危険すら感じるし〜)…そんな極限状態の深夜労働の脳と身体に、コレが効くのだ、沁みるのだ。

このアルバムが出たの1997年。日本では若者の間でピッチ(PHS)がブームで、数十文字のメッセージをカタカナで気軽に送れて「画期的よね♪」ってな時代ですよ、あぁた。インターネットなんてまだまだ一般に普及しておらず、「コンピューター」というものに脅威や違和感を感じることができたおそらく最後の(?)時代ですよ。そのせいかどうかは不明ですが、まるで日進月歩のハイテクワールドや電光石火に流れゆく現代人の時間に抗うかのように、このアルバムはどの曲もぜんぜんピコピコっとしていないのだ(*ピコピコ←流行の電子音ばりばりの軽快なテクノポップサウンド的ミュージックを思い浮かべてくだせえ)!うーん、タイトルは“OK Computer”なのにぜんぜんコンピューターぽくないっ! だいたい“OK Computer”って意味もよくわかんないけどさ?

いくつかの曲でシャンシャンシャン…と小気味よく入る鈴のような音なんて、こりゃもうローテク感たっぷり(褒めてるんだ!)。わたしゃあ図らずも、保育園のお歌の時間に、「ジングルベール!ジングルベール!…… ほら!みんなが大きな声で歌うからサンタさんのそりが近づいてきましたよぉおぉお!!」とハイテンションに叫ぶ保母さんが、背後に回した手に隠し持った鈴を必死こいてシャンシャン振っていたのを思いだしましたよ(クラスメートの半分以上は気がついてたんだよ、せんせ…)。いやぁ、こんな音を秋以降に聴いちゃったら、ちょっとしたクリスマスソング気分だわね。特に5曲目の Let down なんか、シャンシャンと優しく繰り返される音が、まるで街にしんしんと降りつもる雪のよう。やーん、ラブリーちゃんとのハッピーなホワイトクリスマスのデート気分を(殺風景な仕事部屋で)イリュージョンして独り遊びしちゃうぅぅぅ〜。

トム・ヨーク すべてを見通す目(単行本)…しかしながら、ひとたび歌詞に耳を傾けてみると、けっこうイメージが違うのである。アルバム全体の流れとしては、おおまかに 【1. 世界への違和感・慟哭】 「たすけてくれ〜!オラぁもうだめだ〜!」→ 【2.やけくそモード】 「いーよいーよ。もぅ落ちるとこまで落ちますから」→ 【3.諦念・悟り】 「だけどオレら、なんとかかんとかこんな世の中やり過ごすんだよね」…である(わたしの解釈は間違っているかもしれんが、そんなことは知らん)。これを一晩中ノンストップで部屋中に響かせてご覧なさいよ。もう脳みそが眠ってる暇なんかないですよ。

わたしはトム・ヨークの声が好きだ。あの絞るような、ちょっと普通の精神状態すれすれな感じの危うい声がたまらん。痛みや官能に不意をうたれてつい出てしまった声や、無垢な赤ん坊がこちらの予想外にあげる歓喜の声なんかに共通する、一種のエロティックさを感じてしまう。三省堂神保町店の音楽本コーナーに行くたびに、ひそかに『トム・ヨーク すべてを見通す目』(シンコーミュージック)をぱらぱらしては買おうかどうか悩んでいることもここに告白する。

O.K. Computer
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Radiohead
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□初出2011年1月19日



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2011年02月25日

XTC 'skylarking'

1970年代にパンクバンドとしてデビューし、次第に凝った音作りをする職人的気質を帯びていったイギリスのバンド XTC が、これまた独創的なソングライターであるトッド・ラングレンによるプロデュースのもとで1986年に制作したアルバム「スカイラーキング」。XTC のフロントマン、アンディ・パートリッジとラングレンの仲が制作中に険悪になり、アンディ自身が「失敗作」であると言い放ったアルバムながら、美しい旋律の曲ぞろいで XTC のアルバムのなかでも大人っぽく落ち着いた作品(その反動か3年後に出た次作 Oranges & Lemons はサイケ色の濃いはじけたアルバムでした)に仕上がっていて、個人的にはいちばん好きです。実はこの作品は夏の一日の時間の移り変わりをテーマにして作られたものだそうですが、一曲目の冒頭に聞こえる虫の声をはじめ、後半に出てくる映画のサントラ風の曲調などがどこか秋をイメージさせます。アルバムとしての統一感もすばらしい(とりわけ前半の流れが絶妙)ので、これはシャッフルではなく一曲目から通して聴いていただきたいです。

□ XTC - Grass http://youtu.be/Ozu8KGFH-CU

Skylarking
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2011年02月23日

The Monochrome Set 'Love Zombies'

ザ・モノクローム・セットは以前ご紹介したイギリスのエル・レーベルに所属していたこともあるバンドです。軽快でテンポのよいギターとキャッチーでポップかつときにエキゾティックなメロディ、そしてリーダーでヴォーカルを担当するインド人のビドの甘い声が魅力で、かつてアンディ・ウォホールが彼らについて「ベンチャーズとヴェルヴェット・アンダーグラウンドを足して2で割ったようだ」と述べたのだそう。ダークな色調を帯びた曲もあるけれど、彼らの音楽には常にチープな雰囲気が漂っていて、そのB級感がたまりません。セカンド・アルバム Love Zombies にある "The Man with Black Moustache(黒ひげの男)" という曲のイントロがクリスマスっぽくてこの季節によく聴いていましたが、サンタのことをパロった陽気な曲なのかと思っていたら、どうも物騒な内容の歌みたいです・・ このアルバムは現在廃盤ですが、この曲はこちらで聴くことができます。

The Monochrome Set - Jet Set Junta (彼らの代表曲。ビドが美しい!)
http://youtu.be/4ouBnu9AQcU


Best of the Monochrome Set
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2011年02月22日

Depeche Mode 'A Broken Frame'

フランスのファッション雑誌から命名されたデペッシュ・モード Depeche Mode は、それが理由でというわけではないでしょうが、本国イギリスだけでなくフランスでも人気のあるエレクトリック・ポップのグループです。80年結成だからもう30年近く活動してる、ってすごい。最近はハードでソウルフルなイメージが定着しているみたいだけど、結成したてのころは物静かな青年たちが恥ずかしそうにやってる、というような音でした。彼らの2枚目のアルバム A Broken Frame は最も内向的な作品で、ヒット曲 "The Meaning of Love" のようなポップな曲もあるものの、"Leave in Silence" や "My Secret Garden" というその他の曲名が語るように、叙情的で静かな音が中心です。今となっては多少の古臭さはありますが、この柔らかいシンセの音を当時聴いたときは、「電子音ってこんなに温かくて切ないんだ」と驚いたし、デイヴ・ガーンのヴォーカルが前作よりもいっそう厚みと深みを増したことでその感動もなおさらでした。私は冬にエレクトロ系の音楽を特に聴きたくなりますが、発表されて25年以上たつこのアルバムは今でもそのお気に入りのひとつです。しんみりしたい冬の夜におすすめ。

□Depeche Mode - My Secret Garden http://youtu.be/Yk8kQV5Bnc4


A Broken Frame
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2011年02月20日

Ben Watt 'North Marine Drive'

冬の時期一人でしみじみしたいときに聴きたくなるのがベン・ワット Ben Watt の1983年作「ノース・マリン・ドライヴ North Marine Drive 」です。彼は夫婦でのユニット、エヴリシング・バット・ザ・ガール Everything But The Girl での活動のほうが有名ですが、ソロ・アーティストとして(おそらく)独身時代に発表したこの作品は、アコースティック・サウンドの名盤です。奥方トレイシー・ソーンの生命力あふれる低音とは対照的な、頼りなげで繊細な彼の声とアコースティック・ギターのみで成り立つシンプルな音は、なぜか寒い季節になると懐かしくなってよく聴いています。冬枯れの景色に似合う物悲しい音なのだけれど、一方で 温かみも感じられるのは、やはりベンの声のもつ優しさゆえなのでしょうか。昔、このアルバムタイトルと同じ名前のファッション・ブランドがあったのだけど、たぶんデザイナーの人が彼のファンだったんだろうな・・

□Ben Watt - North Marine Drive http://youtu.be/zNflP5ow71o

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2010年03月22日

Robert Wyatt "Nothing Can Stop Us"

Nothing Can Stop Usロバート・ワイアットは1945年イギリス生まれ。もともとソフト・マシーン、マッチング・モウルというジャズ・ロックグループのドラマーでしたが、73年に転落事故に遭って下半身不随の身となりました。車椅子での生活になってから、彼はソロ・シンガーとして新しい音楽人生をスタートさせ、今でもすばらしいアルバムを発表し続けています。

彼の魅力は何と言ってもその歌声です。髭もじゃのおじさん、という風貌からは想像できない、まるで天から降ってきたかのような澄んだ声を聴くと、月並みな表現ではありますが「心が洗われる」気分になります。素朴でゆったりとした音をバックに流れてくる彼の清らかな声を、秋の夜長に電気を消した部屋のなかでしんみりと聴くのは感慨深いものです。

これまで数多く発売された彼のアルバムのなかで選ぶとすれば1982年発売の「ナッシング・キャン・ストップ・アス」でしょうか。かつて ミュージック・バトンのエントリーで、「思い入れのある曲」として選んだ At Last I Am Free はこのアルバムに収録されています。彼はジャズの名曲をカヴァーすることも多く、このアルバムでも Strange Fruit (奇妙な果実)を歌っていて、ビリー・ホリデイのそれとはまた異なった不思議なひとときを味わわせてくれます。


Robert Wyatt - At last I Am Free

■「ヒズ・グレイテスト・ミッシーズ −ロバート・ワイアット30年の軌跡」(ベスト盤。At Last I am Free も収録)



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2010年03月13日

RADIO HEAD "KID A"

KidA.jpg映画に使われていた音楽が、その映画と同じくらい、あるいはそれ以上に強い印象を与えた、というご経験はないでしょうか。

ある時。ベトナムに暮らす貧しい姉弟の悲劇を描いたある映画を観ていると、これから身を売ろうとする姉が客を待っているディスコで、英語の曲がかかっていました。切ないメロディーとヴォーカル、そしてその甘さを切り裂くような激しいギターのカッティングがときおり響くその曲は、その映画が当時まだよく知らなかったトラン・アン・ユン監督の「シクロ」という作品であることがわかっても、誰の何の曲なのかわからぬままでした。

またある時。キャメロン・クロウ監督の「バニラ・スカイ」の冒頭で主演のトム・クルーズが目覚める場面で、"Open your eyes" というフレーズとともに不思議な曲が流れてきました。その直後に続く誰もいないニューヨークの街を映した非現実的な場面とともに、(映画自体はそれほど面白いとは思わなかったけれども)この音楽は記憶に強く残りました。しかしこの曲はオリジナルサントラだと思っていたので、あえて深く作曲者だとかを追求することはありませんでした。

そしてまたある時。村上春樹の『海辺のカフカ』を読んだ後で、カフカ少年が闇の中で聴いていた音楽が知りたくなり、この実在するロック・グループのアルバムを探しだしてプレーヤーにかけたとき、スピーカーから流れてきた最初の音は、「バニラ・スカイ」のあの曲でした。そしてどんどんこのバンドの曲を聴いていくうちに、「シクロ」で気になっていた曲が、彼らの大ヒット曲 "Creep" であることもわかったのです。

イギリスのロックに詳しい方なら、彼らとは現在イギリスで最も実力あるバンドのひとつ、 Radiohead のことだとすぐおわかりでしょう。私は10代の頃からUK音楽に親しんできましたが、このバンドがメジャーになりはじめた1992〜3年頃は、ちょうど新しい音楽をほとんど聴かなかった時期にあたり、(名前ぐらいは聞いたことがあったけれど)彼らのこと、つまり "Creep" で一挙にブレイクし、逆にそのための重圧に押しつぶされそうになりながら、"OK Computer"、"Kid A"(注1)といった90年代のロック史に不可欠なアルバムを苦しみつつ発表しつづけてきたということ、など全く知りませんでした。

その後彼らの曲やこれまでの歩みを知るにつれて、レディオヘッドは自分にとってとても重要な存在となりました。聴くたびに胸を打たれる美しく重みのある旋律と歌詞、常に実験精神を忘れない姿勢、ヴォーカルのトム・ヨークをはじめメンバーの人となり、など彼らの魅力を語れば切りがないですが、音楽的な情報源とは別なところから知ったこともあり、ほかの好きな人々とは違う特異な位置を占めるようになりました。彼らの曲を聴くときは、しばしばその曲が引用された映画(注2)や小説、また彼らがコラボレートしたアーティストたちの作品が浮かんできます。つまり、私にとってレディオヘッドの音楽は、分野を問わず他の作品やアーティストへとつながる中継地のような存在でもあるのです。


注1:写真中。村上春樹さんはカフカ少年が聴いていたのはおそらくこのアルバムだと述べています。

注2:最近のフランス映画では、cyberbloom さんのエントリーでも扱われていたセドリック・クラピッシュ監督の「スパニッシュ・アパートメント」で "No Surprises" が聴けます。

Radiohead - Creep
Radiohead - No Surprises



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