2013年02月11日

“At Last” Etta James (1961)

「希望」を感じる曲はないか、と思いめぐらして浮かんだのがこの曲。先頃亡くなったエタ・ジェイムズが20歳そこそこで歌った、オールディーズ感たっぷりなバラードです。

オリジナルのレコーディングは1940年代。グレン・ミラー楽団でした。エタが吹き込んだ当時でさえ懐メロだったわけですが、彼女の尋常じゃないパワフルな歌声は、歌に新しい命を吹き込みました。

夢に見た相手(希望と読み替えてもいいかもしれません)とようやく巡り会えた・・・喜びにうち震える瞬間を歌った甘い内容の歌です。が、エタならではの直球ど真ん中!な真っすぐさとメロディを浸食するブルージーなにじみは、歌に独特の陰影と狂おしさを与えています。「あなた」を求め焦がれて必死に手を伸ばす気持。「あなた」とついに向き合った時にわき起こる胸のざわめき。恐れ。不安。あれこれ入り交じった感情がふつふつとわきたっているのが聞こえます。

この陰影には、エタ・ジェイムズという一人の女性が歩んできた人生の複雑さも関係しているかもしれません。1930年代末の西海岸に黒人の不良少女の私生児として誕生。父親は「白人」というということしか知らない(母親は「あんたの父さんは伝説のハスラー、ミネソタ・ファッツだ」とうそぶいていたそうだけれど)。親の愛とは縁遠く、15才で年をごまかして芸能界入り。生きるためにステージに立ち続け、彼女を認めてくれた新しいレーベルのために吹き込んだのがこの曲でした。それから他界するまで50年余り。警察のごやっかいになるなど人並み以上の浮き沈みを経験することになりましたが、エタは歌うことを止めませんでした。彼女はインタビューでこう語っています。「歌うとね、ため込んできたいやなこと、あれやこれやをばーっと吐き出せるの。」新しい場所で、歌手として再スタートを切った若いエタのいろいろな思いが、そっくりそのままこの曲に落とし込まれているようにも聞こえるのです。

この曲は、ハッピーエンドではなく、始まりの曲でもあります。ついに私のものとなった「あなた」と手を取り合って、さてどこへ行きましょう?不安と高揚が入り交じるスタート。



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2013年02月05日

The Spinners "It's a Shame”

6月らしい、しっとりとした雨の日に、それにふさわしい曲をチョイスしよう・・・などと呑気にしているうちに、いつのまにか夏の入り口がもうそこに!(いかなる音楽ともマッチしない、怖くなってくるほどのドカ降りばかりだったのも原因?。)

そこで、今の気分にグッと来る、熱いけどヒンヤリ感もある曲を選んでみました。アトランティックに移籍する前の実力派ソウル・グループ、スピナーズの名曲。ペンをとったスティービー・ワンダーのいかにも彼らしいメロディも結構ですが、まずのっけからもっていかれるのがイントロの何とも涼しげなギター。後でも繰り返されるこのリフが、熱波の中で食すアイスキャンデーみたいに、ヒンヤリ気持よくさせてくれます。

曲そのものはこれでもかというほどノリノリ。バックをつとめた、モータウンが誇るファンク・ブラザーズのお仕事ですが、特に目立っているのがうなりをあげるJ.ジェマーソンのベース。自在に、華麗に展開するベース・ラインは、この曲の影の主役。ドキドキさせられます。

そしてガッツ溢れるリードヴォーカルの、ちょっぴり下世話な声がいい。ムラムラと、夏の濃度をあげてくれるんです。
 
クーラーが利いた部屋なんかではなく、暑さの残る宵の頃に屋外で聞くと最高でしょうか。

聴いてみたい方はこちらでどうぞ。 

http://youtu.be/XHXFOUQBRHE


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2010年03月16日

Dusty Springfield ”Dusty In Memphis”

Dusty in Memphis1966年から翌67年にBBCで放映されたダスティ・スプリングフィールドのワンマンショーのDVDが数年前にリリースされています。ブリティッシュ・インベンション女子代表として世界的なヒット曲(「この胸のときめきを」)にも恵まれ、名実ともにイギリスでナンバーワンの女性歌手であった、「絶頂期」を記録した貴重な記録です。

映像はモノクロですが、20分弱の番組のために毎回複数のアレンジャーを起用、ストリングスを含むフルオーケストラに、番組専属のバックヴォーカルグループまで抱えた豪華な内容で、BBCの力の入れようが伝わってきます。
 
そんな期待にダスティは見事に応えます。持ち歌より他人の歌をたくさん歌うという挑戦的な趣向もなんのその。モータウンからシャンソン(例のジャック・ブレルの曲)、ブロードウェイの最新ヒット曲からトラッド、ブロッサム・ディアリーが得意とするようなジャズ小唄まで、いいメロディ、という条件で選ばれた雑多な楽曲を汗もかかず歌いこなしてしまいます。その完成度たるやライブ映像だとはとても思えないほどで、どんな曲も自分のものにして完璧に歌い上げるのだからオドロキ。こういうのを無敵の状態というのでしょうか。
 
springfield01.jpgその反面、いわゆるエンターテイナーになりきれないでいるのも興味ぶかい。踊れるでなし、トークも苦手らしく、決められた口上を言うのがせいぜい。観客の万雷の喝采にもどう応えていいのかわからず、手を胸の前で組んで小さく礼をするのがやっと。どうやら大変にシャイな人柄、のようなのです。
 
しかし、歌となると別人に変身。バラードのストリングスにもアップテンポのビートにもすっと身を委ね、時に奔放に、時に細心の注意を払って声を重ねてゆきます。音楽の一部となる喜び、歌う喜びをここまで率直に「見せて」しまうシンガーは見た事がありません。かといってスターにありがちな自己陶酔はみじんもなく、そんな振舞いを禁じるストイックさすらも漂わせているのです。スターにもエンターテイナーにもなりきれない、しかし音楽に対してだけはどこまでも貪欲に、そして誠実でありたい—そんな真摯な姿勢には、大げさに聞こえるかもしれませんが感動すら覚えます。
 
翌1968年にはアメリカ深南部へ乗り込み、ホワイト・ソウルの金字塔的アルバム『Dusty In Memphis』を製作。しかし移り気な世の中はまたたくまにダスティを過去の物にしてしまいました。享年59歳、セクシュアリティやドラッグ等の問題のせいで波風の耐えない短い人生でしたが、後に残った音楽は今でも傾聴に値するものです。お気に入りの持ち歌 ”Some of Your lovin’” で「私はよくばりじゃないわ、少しでいいからあなたの愛を分けてちょうだい」と歌ったダスティ。スターとして栄光を手にした時代は決して長くはありませんでしたが、彼女が真摯に追い求め作り上げた音楽は今も輝きを失っていません。


Dusty Springfield - Some of Your lovin’
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5 名盤です!
5 ダスティを買うならまずこれっ!




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2010年03月11日

Anthony Hamilton - Change

古き良きソウルミュージックの歌心を守りつつ、懐メロでない今の音で勝負し続けるシンガー、アンソニー・ハミルトンの”Change The World”。セカンドアルバム”Ain’t Nobody Worryin’ ”に収録されています。

いい年のおじさんであるハミルトンがせつせつと歌い上げるのは、恋に落ちてしまった真面目な男の心模様。「世界がひっくり返ってしまった」と、経験したことのない変化に胸ときめかせる、素朴な告白を、フィリーソウルのマナーにのっとったスウィートなアレンジがぐぐっと盛り上げます。都会のLadies’s manでもマッチョなタフガイでもない、自称「南部の田舎者」のハミルトンの気取らないホットなノドが、微笑ましいほどの甘い恋の歌に深みを与えています。塩辛い声質も手伝って、おいしい塩キャラメルのような味わい。どうぞ、召し上がれ。

Anthony Hamilton - Change Your World(from youtube)


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4 男前!
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5 まさにソウルシンガー。




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